ネットワークインフラ運用はなぜ“見えない負債”になりやすいのか

 株式会社ネットワークバリューコンポネンツ

こんにちは。ネットワークエバンジェリストの飯田です。

組織においてネットワークは「繋がって当たり前」であり、普段あまり意識されない存在かもしれません。しかしネットワークインフラは、遅延が業務影響に直結し、障害が発生すれば組織活動が停止する可能性もある、極めて重要なインフラです。

日々の運用では大きな問題がなくても、

  • 拠点が増えるたびに設定が増えていく

  • 例外ルールが積み重なり全体像が見えなくなる

  • 大きな変化を避けるために既存の構成を踏襲し続けてしまう

といった課題を抱えているケースは少なくありません。

クラウド利用の拡大や働き方の分散、セキュリティ要求の高度化など、ネットワークを取り巻く環境は確実に変化しています。その中でネットワークインフラ運用は、気づかないうちに“見えない負債”として積み上がり、後になって顕在化することがあります。

本記事では、なぜネットワークインフラ運用は負債として蓄積し、経営課題として顕在化するのか。その構造的な課題を整理します。

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ネットワークインフラは“止められない基盤”であり、運用負債が生まれやすい

ネットワークインフラは、業務システムやクラウドサービスの利用、拠点間接続、リモートワークの実現など、組織のIT環境を支える基盤そのものです。

近年はクラウド利用の拡大に加え、AIの普及によって業務で扱うサービスやデータの流れが多様化し、ネットワークインフラに求められる役割はこれまで以上に広がり続けています。そして求められる範囲が広がるほど、その運用は一層難しくなります。

例えば、拠点が増えるたびに接続や必要な設定は増え、ネットワーク構成は拠点の数だけ複雑になります。さらに、利用するクラウドサービスが増えるたびに通信先も増加し、管理・統制すべき対象が広がり、それらに伴い、セキュリティ要件に応じた制御や例外ルールも積み重なっていくでしょう。

こうした対応の一つひとつは合理的ですが、“足し算”が続くことでインフラ全体は複雑化し、運用も難しくなっていきます。過去に投入された設定が「なぜ必要だったのか」「今も妥当なのか」が分からなくなり、いわば秘伝のタレのように管理・統制が難しい設定が積み重なっていきます。設定の影響範囲が読みづらくなることで障害リスクを恐れて変更を避けるようになり、結果として既存構成を踏襲し続ける流れは多くの組織で起きています。

サーバーやアプリケーションであれば影響範囲を限定して停止・刷新することも可能ですが、ネットワークインフラは影響範囲が広大であり、抜本的な変更や再設計を行うことは現実的ではありません。止められない基盤であるがゆえに抜本的な見直しが難しく、その結果が後になって運用負債として顕在化していきます。

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運用負債は“小さな例外”の積み重ねで生まれていく

ネットワークインフラの運用負債は、ある日突然発生するものではありません。日々の小さな対応が積み重なった結果として、徐々に顕在化していきます。

例えば、次のような要望や事情に対応する場面が繰り返し発生します。

  • 新しい拠点を追加したい

  • 特定のクラウドサービスを利用したい

  • 一部の通信を特定のグループだけに例外的に許可したい

  • セキュリティ要件に合わせて制御を強化したい

こうした判断はその時点では合理的です。しかし現実には個別の要望に応じた例外的な対応が、既存構成の上に積み重なっていきます。

こうした小さな例外が積み重なった結果、インフラ全体は次第に複雑化し、運用も難しくなっていくでしょう。例えば、

  • 全体像が見えにくくなる

  • 影響範囲が読めず変更が怖くなる

  • 結果として属人化しやすくなる

といったことが想定されます。

このように運用負荷は増えてしまう一方で、負荷を下げることは容易ではありません。拠点やサービスが増えれば管理対象も増え、統制の難易度も上がっていきます。

運用負債の厄介な点は、問題が顕在化するまで表面的には安定しているように見えることです。しかし実際には複雑化と硬直化が進み、変化への対応力が落ちていきます。そして更改や障害、拠点追加といった局面で、蓄積していた運用負債が一気に顕在化します。

時代の変化がネットワークインフラ運用の限界を早めている

ここまで紹介したように、ネットワークインフラは継ぎ足しによって複雑化し、運用負債として積み上がりやすい構造を持っています。そして近年は、その負債がより顕在化しやすい環境になっています。

理由はシンプルで、組織を取り巻く変化のスピードそのものが上がっているためです。例えば以下のような変化のために、従来の延長線上で個別対応を積み重ねるだけでは追いつかないのが現状ではないでしょうか。

  • 利用するクラウドサービスが増え続け、通信先や管理対象が広がっていく

  • 拠点や働き方の多様化によって、ネットワーク構成はより複雑になる

  • セキュリティ要求の高度化で、制御や例外ルールが増え続ける

  • AI活用の進展も背景に、データや通信の流れがさらに多様化する

表面的には安定して運用できているように見えていても、変化への対応力は少しずつ低下していきます。その結果、ネットワークインフラは「支える基盤」であるはずが、次第に組織の変化を妨げるボトルネックになってしまいます。

このような状況の中で、ネットワークインフラ運用は技術部門だけの課題ではなく、組織の変化対応力や事業継続に直結する経営課題として捉え直す必要が高まっています。

繰り返し発生する維持・更改コストを前提にしない“持続可能な運用モデル”へ

ネットワークインフラは組織の日々の活動を支える重要なインフラであり、止めることのできない存在です。

その実態は、これまでの環境変化に合わせた継ぎ足しが積み重なり、複雑化と運用負債を生みやすい構造を持っています。拠点追加やクラウド利用、例外対応、セキュリティ強化といった判断は一つひとつ合理的です。しかし積み重なるほど全体像の把握は困難になり、その運用は難しくなっていきます。

さらにネットワークインフラは、維持・更改が周期的に発生する領域でもあります。従来のように機器や構成を積み増しながら支え続けるモデルでは、コストも運用負荷も増え続けてしまいます。

時代の変化が加速する中で問われているのは、部分的な強化や延命ではなく、「繰り返し発生する維持・更改コストを前提にしない、持続可能な運用モデルへ転換できるか」という視点です。ネットワークインフラの見直しや更改は、単なる更新ではなく、組織の変化に追随できる運用のあり方を再設計する機会になりつつあります。

まとめ

本記事で整理したポイントは次の通りです。

  • ネットワークインフラは組織全体を支える「止められないインフラ」である

  • 拠点追加やクラウド利用、例外対応の積み重ねによって複雑化しやすい

  • 小さな例外が運用負債として蓄積し、後になって顕在化する

  • 時代の変化が加速する中で、ネットワークインフラ運用は経営課題になりつつある

  • 繰り返し発生する維持・更改コストを前提にしない、持続可能な運用モデルへの転換が求められている

では、こうした運用負債や維持・更改コストの課題に対して、組織はどのような運用モデルを選択していくべきなのでしょうか。

次回は、運用負荷や更改コストを抑えながら変化に追随するための解決アプローチや方式について整理します。

続編のブログは順次公開予定ですので、引き続きチェックいただけると嬉しいです。

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