クラウドセキュリティは製品だけでは決まらない
―運用形態別に考える実現アプローチ
株式会社ネットワークバリューコンポネンツ
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クラウド利用が当たり前となった現在、多くの組織でセキュリティ対策の強化が進められています。しかし、「対策を進めているにもかかわらず、期待した効果を実感できない」という課題を抱えるケースも見られます。特に、ベストプラクティスやツールを導入したものの、「運用が回らない」「対応が属人化する」といった理由で、自組織に適用しきれないという声は少なくありません。
こうした状況の背景には、「クラウドセキュリティは製品で解決できる」と捉えられているケースがあります。しかし実際には、セキュリティの成否を分けるのは製品ではなく、組織の運用形態との整合性です。
本記事では、運用モデルという観点から、現実的なクラウドセキュリティの考え方を整理します。
組織の運用形態別に見るクラウドセキュリティの設計ポイントやセキュリティ方針の決め方のヒントもご紹介していますので、ぜひ最後までご一読ください。
クラウドセキュリティ対策を進めているものの、期待した効果を実感できていないケースは少なくありません。
たとえば、次のような状態に陥ることがあります。
運用が複雑化し、現場で継続的に実施されなくなる
導入したセキュリティ対策が、リスク低減につながっているか分からない
ベストプラクティスが自組織の環境に適用できない
一見すると個別の問題に見えますが、これらには共通したパターンがあります。
具体的には、対策そのものではなく、「どのように運用するか」が整理されていない点にあります。
例えば、クラウド環境のリスクを可視化するツールを導入しても、誰がどの頻度で確認するのかが決まっていなければ、検知されたリスクは放置されてしまいます。また、セキュリティ設定に問題が見つかっても、修正の責任者が明確でなければ対応は後回しになり、リスクが解消されない状態が続きます。
このように、「必要な対策は実施しているはずなのに機能しない」という状況の多くは、ツールと運用が噛み合っていないことが原因です。
クラウドセキュリティは単にツールを導入するだけでは機能せず、運用と一体で設計されて初めて実効性を持ちます。そのため、セキュリティ対策を検討する際には、「どの製品を導入するか」だけでなく、「自組織の運用に適合するか」という視点が不可欠です。
クラウドセキュリティを検討する際、「どのツールやサービスを導入するか」という観点から検討を始めるケースは少なくありません。しかし、同じツールやサービスを導入しても、うまく機能する組織と、十分に機能していない組織に分かれるケースが多く見られます。
この違いを生む要因はどこにあるのでしょうか。
鍵となるのが、「誰がどのようにクラウドを管理しているか」という運用形態です。
たとえば、情報システム部門が一元的に管理している環境と、各事業部がそれぞれクラウドを利用している環境では、求められるセキュリティの設計や運用方法は大きく異なります。
運用形態という観点で整理すると、クラウドの運用形態は大きく以下の3つに分類できます。
情報システム部門が主導して管理する「中央統制型」
事業部やプロジェクト単位で利用が進む「分散型」
共通基盤と現場裁量を組み合わせた「ハイブリッド型」
この分類は、従来のITガバナンス(中央集権・分散・ハイブリッド)とも共通する考え方です。重要なのは、それぞれの運用形態によって、適切なセキュリティ対策や実現方法が異なるという点です。
次章では、これらの運用モデルごとに、セキュリティ設計がどのように変わるのかを具体的に整理します。
それぞれの運用形態の特徴とセキュリティ設計の違いを整理すると、自組織に適したアプローチが見えてきます。
情報システム部門が主導してクラウド環境を管理する運用形態です。

ガバナンスを効かせやすく、セキュリティポリシーを統一しやすい点が特長です。一方で、現場の要件に対する柔軟性が不足しやすく、申請や承認プロセスがボトルネックになることがあります。
このモデルでは、以下のようなポイントが重要です。
標準化されたセキュリティポリシーの整備と徹底
アクセス権限や設定変更の統制強化
例外対応のルール化と可視化
→ 全社で統一ルールを重視し、情報システム部門が主導して管理している組織に適した形態です。
各事業部や開発チームが主体となってクラウドを利用する運用形態です。

スピードや柔軟性に優れる一方で、設定のばらつきやガバナンスの低下が課題となりやすい傾向があります。
このモデルでは、中央で細かく制御するのではなく、クラウド環境全体の状況を可視化し、リスクの高い箇所から優先的に対応していくアプローチが有効です。具体的には、以下のようなポイントが挙げられます。
クラウド環境全体のリスク可視化
ガイドラインやベストプラクティスの提示
自律的な改善を促す仕組みの整備
→ 各事業部や開発チームが主体となり、スピードを重視してクラウドを活用している組織に多く見られます。
中央統制と分散型を組み合わせた運用形態です。

共通基盤や標準ルールは中央で整備しつつ、各チームに一定の裁量を持たせることで、ガバナンスと柔軟性のバランスを取ります。
多くの組織がこの形に近づいている一方で、役割分担が曖昧になると、責任の所在が不明確になるリスクもあります。このモデルでは、以下の点が重要です。
共通基盤(アカウント構成、ネットワーク、ログ基盤など)の整備
中央と各チームの責任範囲の明確化
ポリシーと例外対応の運用ルールの整理
→ 共通基盤を持ちつつ、各チームに一定の裁量を持たせて運用している組織に適した形態です。
同じ「アクセス制御」や「可視化」といった対策であっても、運用形態によって求められる実現方法や優先順位は大きく異なります。そのため、重要なのは「どの対策を選ぶか」ではなく、「自組織の運用モデルに合わせて、無理なく継続できる形でどう設計するか」という視点です。
では、実際にその運用方針はどのように決めていくべきなのでしょうか。
クラウドセキュリティは、運用形態によって設計や対策の進め方が大きく変わります。では、自組織のクラウド環境をどのように運用していくべきなのでしょうか。
中央で統制を強めるのか、各チームに裁量を持たせるのか、あるいはそのバランスを取るのか。この方針によって、採るべきセキュリティ対策や運用設計は大きく変わります。
しかし、この方針を検討するうえで前提となるのが、自組織のクラウド環境の現状です。
クラウド上にどのような資産が存在しているのかに加え、誰がどのように利用しているのかが見えていなければ、どこまで統制を効かせるべきか、どこに裁量を持たせるべきかを判断することはできません。その結果、本来の運用実態と合わない設計を選択してしまい、セキュリティ対策が機能しない原因となることがあります。
このようなズレを防ぐためには、まずクラウド環境の構成や利用状況を可視化し、現状を正しく把握することが重要になります。具体的には、以下のような観点での把握が求められます。
クラウド資産の棚卸し(どのサービス・アカウントが存在するか)
アクセス権限の状況(過剰権限や未使用アカウントの有無)
セキュリティ設定の状態(公開設定や設定ミスの有無)
ログ取得・監視の状況(インシデント検知や追跡が可能か)
これらを整理することで、自組織の運用実態とリスクの全体像が見えてきます。そのうえで初めて、自組織にとって適切な運用方針とセキュリティ設計を、現実的な形で検討できるようになります。
クラウドセキュリティの具体的な進め方については、次回の記事で、「どのように現状を可視化するのか」「どの観点から優先順位を付けるのか」を解説します。
あわせて、自組織の状況を整理し、具体的な対策に落とし込むためのステップを、実務で活用しやすい形で紹介します。
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